米MBA学生「売り手市場」に異変

ビジネススクールの学生が不透明な雇用市場に身構えている。例年なら今頃は多くの学生が就職活動にいそしむ時期だが、これまで経営学修士（MBA）課程修了者を採用してきた多くの企業が秋の採用計画を棚上げしている。

　学生も学校もこうした状況を懸念している。MBA課程の学生が一流のプログラムに通うために高額な学費を支払うことができるのはキャリアアップや高給が約束されているからだ。学校にとって、高い就職率は入学希望者に対する売りになる。新型コロナウイルスが世界的に流行するまでは多くの上位プログラムの就職率は80％から90％だった。

　世界最大級のプロフェッショナルサービス企業、アーンスト・アンド・ヤング（EY）は新型コロナの第2波がどうなるかを見極めてから今年の採用計画を確定したい考えだ。

　一方でEYは多くの学部生を採用する予定だ。EYで世界の採用活動を統括するダン・ブラック氏によると、一般的に大卒者が担当する税や保険の部門には、経済で何が起きようがやらなければならない年金の仕事が関係するが、「MBA修了者が主に担当するコンサルティングや戦略、トランザクションは経済の相対的な強さにより影響されるプロジェクトワークが傾向として多い」という。

　ジョージア工科大学シェラー・カレッジ・オブ・ビジネスのMBAキャリアコーチで企業担当のケビン・ステイシア氏は、学生も企業も今はどっちつかずの状態に置かれていると話す。

　サフォーク大学ソーヤービジネススクールのMBA課程で学ぶマテウス・マドリー氏（30）は、デジタルマーケティングの業界でキャリアに弾みをつけるためMBAを目指したという。しかし今年の夏はインターンとしてなかなか採用されず、代わりに大学で働いた。

　マドリー氏は「私たちMBAの学生にとって、職探しは人脈を作って人と知り合う上で非常に重要。新型コロナが流行して、そうしたつながりを失った気がする」と話した。「私たちはこの秋、未知の事態に足を踏み入れる。誰にとってもつらい状況だ」

　MBA協会などが1000社以上を対象に実施した最近の調査によると、今年はさまざまな分野の企業が管理職の採用を60％近く減らす予定だ。

　小売業や観光業などは新型コロナ流行を受けた休業の影響で採用を抑制。ネット通販の利用増の恩恵を受けた物流企業も管理職の採用を大幅に減らした。

　銀行、エネルギー、エンジニアリング、建設では半数以上、法務サービスと製薬では3分の2近くの企業が管理職の採用を減らすと回答した。一方、保険、娯楽、コンピューター、エレクトロニクスでは約4分の1の企業が採用増を計画している。

　ノースイースタン大学ダモア・マッキム・スクール・オブ・ビジネスのラジ・エチャンバディ学長によると、これまでMBA課程修了者を採用してきたコンサルティング会社や金融サービス会社が採用計画を抑える一方で、テクノロジー企業が新たな採用者として浮上しているという。

コーネル大学ジョンソン経営大学院でMBAプログラム担当の副学長ドリュー・パスカレラ氏によると、アマゾン・ドット・コムやマイクロソフトはビジネススクールの学生を対象にした採用活動をこれまでにないほど早い時期に開始していて、通常より多くの学生に採用通知を出す用意があることを示唆したという。

　クラウドコンピューティング会社のサービスナウは昨年、ビジネススクールの学生を対象にしたインターンシッププログラムを開始し、来春は今年より10人から20人程度、MBA修了者の採用を増やすことを目指している。

　サービスナウの最高製品責任者でビジネススクールの学生の採用を担当するチランタン・CJ・デサイ氏は「MBA修了者はより良い製品作りに貢献してくれる。来春卒業予定の学生たちについて私は楽観視している」と話した。

以上、Wall Street Journalより要約・引用しました。
https://www.wsj.com/articles/m-b-a-s-are-usually-swimming-in-job-offers-by-now-not-this-year-11598866200?mod=searchresults&page=1&pos=3

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