加速的に労働力配置転換を引き起こすコロナパンデミック

2020/04/01

コロナウィルスによるパンデミックにより労働市場は強制的に労働力の配置変換を余儀なくされている。まるで第二次大戦中に政府や軍が強制的に一般労働者を軍事要員に駆り立てた時のダイナミズムのようだ。

世界中でつい1か月前までホテル、レストラン、航空会社の従業員であった人々が、食料品スーパーマーケット、オンライン小売、医療従事者にへと急遽転向している。後者の業界はコロナウィルス拡散防止のため国や都市の外出自粛、シャットダウンが広がり長期化する中で、外出できない市民にライフラインの食糧を配達したり、医療従事者のウィルス感染により十分なスタッフを確保できない病院を機能させていくために急遽労働力を必要としている。

労働力の配置変換は、国境閉鎖により外国からの短期出稼ぎ労働者に頼れなくなった農業現場で、定年退職者や学生がフルーツや野菜の苗植えや収穫に参加する現象も引き起こしている。

ドイツでは現地マクドナルド法人が同社従業員を人手の足りない食品スーパーチェーン大手2社に貸し出している。

3月後半、アメリカでは過去に例を見ない328万人もの人が失業保険を申請した。同時に薬局チェーンのCVSや食品大手のWalmartは50万人の新規求人を出した。

以下のグラフは米国における今年1月と3月の総求人数の中の業界割合である。コロナ危機の3月は、薬品・食品小売、医療、流通の求人割合が大きくなり、サービス業や娯楽業界の割合が激減している。

国民社会保障制度の仕組みが異なる欧州では以下のような例も出てきている。ドイツは3月後半、コロナによって仕事量の激減した業界の労働者が在宅時短勤務により月給を従来の3分の２まで減らし、副業で人手不足の業界を手助けすることを可能とする法律を成立させた。人手不足の業界とは医療や農業である。ドイツのブランデンブルグ州で農業を営むフォルツ氏は、春のこの時期ポーランドやルーマニアから150人以上の季節労働者を雇うのが常だったが、国境が閉鎖された今はそれが叶わない。今年は外国人季節労働者の代わりに地元のウェイトレスや音楽の先生、足場組立大工等の人々に助けてもらうことになった。

フランスの農業大臣は、フランスの農家では3月に4万5千人、4月に8万人、5月にも8万人の外国人季節労働者が必要だと話す。今年は国内労働者でこれを賄うしかない。

一部業界では人手不足が起きているが、それは加速的に増える失業者を吸収するには十分でないと経済学者は見る。今起こっている労働力の配置変換は一時的なものであり、将来の労働市場構造を根幹的に大きく変えるわけではない。

世界で最初に閉鎖された中国の武漢でも労働力の配置変換は起こっていた。ボストンコンサルティングのパートナーであるリャン氏は中国のファーストフードチェーンやレストラン、小売事業主に従業員をeコマース事業に貸し出すことを早くから提言。リャン氏のアドバイスを早くに取り入れた企業は従業員大量解雇の事態を避けることができた。