総合的には素晴らしかった2010年代 -健康・富・環境-
貧困・飢餓や環境汚染は激減し、保健衛生は大幅に進歩した
歴史的金融危機直後に始まった2010年代だが、実は蓋を開けてみるとなかなか素晴らしい、いやこれまでで最良の10年だったと言える。
その証拠だが、まずは国連開発計画(UNDP)の人間開発報告書から見てみよう。報告は不平等への警告の形をとっているため、朗報は控えめに扱われているが、「基本的な生活水準の格差は縮小しており、かつてないほど多くの人々が貧困・飢餓・病気から脱しつつある」のだ。
世界銀行の報告によれば、全世界の人口に占める極貧人口の割合は2008年の18.2%から2018年には8.6%へと半分以下に低下した。ワールド・データ・ラブ(WDL)が昨年示した推計によると、「中間層(ミドルクラス)」とみなされる人々が初めて世界の人口の半分を超えた。
保健衛生面の進歩も著しい。水・公衆衛生・医療・ワクチンへのアクセスはこれまでより良くなった。アフリカでのマラリア感染件数は2007年から2017年の間に60%近く減少した。抗レトロウイルス薬治療によって、エイズウイルス(HIV)・後天性免疫不全症候群(AIDS)による死者は半分以下に減った。
世界の平均寿命は過去10年間に3年以上延びた。主に子どもの死の予防によるものだ。国連によると、世界の5歳未満の子どもの死亡率は2008年時点で5.6%だったが、2018年には3.9%に低下した。ずっと以前を振り返ると、われわれがどれほど進歩してきたかが分かる。例えばチャドの子どもの死亡率は1950年から56%低下し、韓国の子どもの死亡率は98%低下した。
こうした進歩には環境汚染という犠牲が伴っているのだろうか。そんなことはない。先進国による汚染は、ある時点から減り始める。「Our World in Data(データで見る私たちの世界)」によると、2007年から17年までの間に、大気汚染による世界の死亡率は5分の1近く、中国の死亡率は4分の1低下している。
先進国が使うアルミニウム・ニッケル・銅・鉄・石材・セメント・砂・木材・紙・肥料・水・作付面積・化石燃料は毎年減っている。米地質調査所(USGS)が追跡している72の資源のうち、66の資源の消費量は減少している。人類はより少ない原料で世界の需要を満たすという課題、つまり生産効率の改善・上昇に成果を見せている。
地球温暖化は依然として課題だが、クリーンな技術を開発して気候変動の問題に対処する上で先進国は好位置に付けている。国際災害データベースによると、2000~09年と2010~15年の間に気候関連災害による年間の死者は3分の1減って、人口10万人当たり0.35人になった。1960年代と比較すると95%の減少だ。これは災害が減ったためではなく、災害への対応能力が上がったためである。
進歩は保証されているわけではない。裕福だったベネズエラが愚かな諸政策によっていかに崩壊したかを見れば分かる。大国間に戦争が起きたり、10年におよぶ金融緩和の後に金融危機が起きたりすれば、世界が脱線しかねない。果てしない貿易戦争やグローバリゼーションの破綻にも同様のリスクがある。
とはいえ、われわれはポピュリストによる反乱と地政学上の緊張に満ちた時期を乗り越えてきた。開かれた社会と自由な市場がある限り、科学者やイノベーターや企業は踏ん張り、かつてない進歩を遂げてきた。
2010年代の終わりが近づくが、人類の創造能力について楽観的になることができる部分は十分にある。愚かな独裁者、強欲な政治家、細かいことにこだわりすぎる官僚は、社会や経済に悪さをするものだ。しかし人間は全体として、こうした人たちが浪費するよりも早く創造し、破壊する以上に修復する。2020年代も人類の善の進歩を信じたい。
以上、Wall Street Journalより要約・引用しました。https://www.wsj.com/articles/the-2010s-have-been-amazing-11576540377?mod=searchresults&page=1&pos=1
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