2人で1つの仕事担うワークシェア、昇進も可能に
フォードではワークシェアリング活用で幹部職に就いた社員も
米国では働き方のイノベーションが止まるところを知らない。「ワークシェア」と聞いて思い浮かべるのは長距離バス運転手が一定時間毎に1台のバスを交互で運転することであろうか? 米国では管理職の一役職にワークシェアをする2人の職員が就くといういうことも起こっている。しかも大企業で。
ワークシェアリングは働きながら家族の世話をする母親を助ける手段として始まった。最近では、2人で1つの役職を担うこの仕組みを活用して幹部職への昇進を果たそうとする人達もいる。
ジョランタ・コフィー氏とラフィ・マヌキアン氏もそうしたコンビの1組だ。フォード・モーターの上級エンジニアリングマネジャーである両氏は昨年、世界的な製品開発で鍵となる部分を仕切る新たな任務を引き受けた。2人が2012年に初めて管理職を分け合って以来、2度目の昇進だ。
2人は、次は幹部職に昇進したいと考えている。そう思うきっかけとなったのは同僚であるジュリー・レバイン、ジュリー・ロッコ両氏の存在だ。レバイン、ロッコ両氏は昨年、3度目の同時昇進でシステムエンジニアリングディレクターに就任。ワークシェアリングで働く社員がフォードの幹部職に就いたのはこの2人が初めてだ。レバイン氏はワークシェアリングがうまくいっている理由について、「自分たちが仕事を分け合うことが誰の負担にもならない」ように気を付けていると話した。
企業がワークシェアリングを導入したのは何十年も前のことだが、あまり普及せず、昇進の可能性がほとんどない、いわゆる「マミートラック」とみなされる単調な作業にのみ採用されることが多かった。2016年に米国企業920社を対象に実施された調査では、少なくとも一部の社員にワークシェアリングを認めていると回答した企業は18%だった。ところが最近は、労働市場の逼迫(ひっぱく)を受けた企業の人材引き止め競争や、職場の多様性を強化する動きによって、ワークシェアリングへの関心――出世の可能性のあるポジションへのワークシェアリング適用に対する関心も――が再び高まっているという。
一般的なワークシェアリングでは、通常、1人のフルタイムの社員が行う仕事を2人の社員で担当し、週3日の勤務日のうち1日は2人の出社が重なるようにする。
最近のワークシェアリングは進化している。コフィー氏とマヌキアン氏はそれぞれ週に4日働いている。大抵、2人とも火曜日から木曜日は社内にいる。1人当たりの週の労働時間が36時間(通常フルタイム勤務の9割)なので、2人には同じポストをフルタイムの社員が務めた場合の9割の給与がそれぞれ支払われている。ワークシェアリングで働く前の2人の平均労働時間はそれぞれ週45時間だった。
フォードでは米国内で数百人がワークシェアリングで働いているが、そのうち、管理職がどれくらいいるのかの公表はないが、ワークシェアリングは比較的階級の高い役職で増えているという。最高人事責任者のキルステン・ロビンソン氏はレバイン、ロッコ両氏のようなケースが増えると予想し、「柔軟に働くことを選んだというだけでキャリアが行き詰まることはない」と話した。
ワークシェアリングで働く社員を管理職に登用している大手企業は他にもある。小売大手ターゲットのミネアポリスにある本社では、管理職を含め、約100人の社員が仕事を分け合っている。ユニリーバでは、2人の上級マネージャーが共同で「ヘルマン」マヨネーズの米国でのマーケティングを指揮している。ヘルマンマヨネーズの米国での売上高は年間10億ドル(約1087億円)に上る。
ワークシェアリングという一般的ではない働き方をどのようにしてキャリアのばねにすればいいのだろうか。成功例を見ると、協力をして計画を立てること、応援してくれる上司、幅広い人脈が必要だ。ワークシェアリングで組む2人は同じような姿勢で仕事に取り組まなければならず、スポットライトも快く2人で分け合わなければならない。ワークシェアリングのコンサルティング会社ワーク・ミューズの創業者メリッサ・ニコルソン氏は「大胆になれ、目立て、自分の活躍をチームのものとせよ」と話す。
フォードのマヌキアン、コフィー両氏はそれぞれ自分の子どもと過ごす時間を増やしたいと考え、管理職ポストをワークシェアで務めることを提案した。当時、マヌキアン氏は入社から22年、コフィー氏は16年が経っていた。マヌキアン氏はコフィー氏の指導役だったため、2人はお互いをよく知っていた。「私たちの直属の上司は積極的に応援してくれた」とコフィー氏は話す。
時間をかけて物事を考えるマヌキアン氏と、速く行動したいコフィー氏はお互いの強みを生かし、協力して問題を解決していると話す。マヌキアン氏はコフィー氏より10歳年上で、現在55歳。退職するまでワークシェアリングを続けたいマヌキアン氏はコフィー氏に、共同で引き受ける仕事の幅を広げるように勧めた。「自分にとって長期的に必要なことをしてほしい。私はついていくから」とコフィー氏に話したという。
ユニリーバでは2016年に、サラ・ハマー氏とミミ・スー氏がヘルマンの米国でのマーケティング担当のトップに就いたが、当初は2人で職務を分けることに反対があった。当初、難色を示した上司のラッセル・リリー氏は対立による効率の悪化や遅れを懸念したが、2人のリーダーとしてのスタイルが調和しているのを見て納得したという。
アリックス・エインズリー氏とシャーロット・チェリー氏はゼネラル・エレクトリックの人事担当者として英国の管理職ポストを首尾よく2人で務めた。他の会社で共同の幹部職に就くため、人脈作りに1年をかけた結果、2016年にワークシェアリングで務める初めての幹部社員としてロイズ・バンキング・グループに採用された。2人は現在、資産管理会社のキルターで、人材・文化担当ディレクターの肩書を分け合っている。
米国で例は増えつつあるものの、ワークシェアリングはまだ一般的ではない。企業にとってもワークシェアリングの導入は1人が一役職を務めるよりもコストが2倍弱かかることになる。それでも働き方の多様性を求める労働者が増え続け、企業側も優秀な人材を引き留めるために柔軟な雇用形態を提供することが求められ続けるのであれば、一つの雇用形態として定着していく可能性は高い。ワークシェアできるような信頼できる仕事のパートナーを今から探しておくのも悪くない。
以上、Wall Street Journalより要約・引用しました。https://www.wsj.com/articles/it-takes-two-how-to-turn-job-sharing-into-a-promotionand-another-11573641002?mod=searchresults&page=1&pos=1
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