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すぐ昇進求める若手社員、会社はどう対応すべき?

 

これはアメリカの若手社員の風潮についての記事だが、日本の企業も米国の若者の昇進に対する意識傾向を知っておいて損はない。大切に育てられ、常に評価されることに慣れているミレニアル世代やZ世代は、社会に出てからの昇進のスピードの遅さに当惑するらしい。

大手小売業者の採用責任者クリストファー・カルー氏によると、就職してわずか1年で昇進を求める若手社員が増えているそうだ。今の新入社員は初歩的な仕事に我慢できず、「準備はできています。次はなんでしょう」と聞いてくるという。彼らがしたいのは戦略の策定に関わったり、事業を動かしたりすることだ。そんな若手に、「いったい何様なのか」と困惑する上司もいる。

 職場でのコーチングサービスを提供するインサイドアウト・デベロップメントが18歳から23歳の1000人を対象に実施した最新調査によると、「Z世代(1990年代半ば以降生まれ)」の75%以上が就職1年目に昇進するべきと考えている。ミレニアル世代でも20代後半から30代前半の若者に同様の傾向があるという。

 一方の管理職は、若手社員が会社を辞めないようにしながら彼らの期待をコントロールしようと努力している。せっかちな新入社員向けに段階的な昇進の道を用意したり、新しい肩書をつくったり、ちょっとした贈り物をするなどだ。数は少ないが、社員の就職1年記念を祝う企業もある。

 ただ、若手社員が「自分は昇進して当然だ」という空気を周囲に振りまくと、キャリアが台無しになる恐れもある。社員800人のニューヨークの広告代理店ベイナーメディアのバイスプレジデント兼採用担当、アレックス・クライン氏は新入社員から頻繁に昇進のチャンスについて質問されると話す。通常より速いペースでの昇給を願い出る若手も多いという。

 クライン氏は「そうした質問は重要だ。私としても成長意欲のある人を採用したい」としたうえで、「自分で努力して昇進や昇給を手に入れたいと会社に印象付ける必要がある」とくぎを刺す。

 性急な若手社員に企業が不満を持つこともある。ニューヨークにあるエンターテインメント企業のシニア・バイスプレジデント、ジョセフ・カッチョーラ氏は自身が採用した有能な新卒の女性社員が入社半年で地に足が着かなくなったことに失望した。

 カッチョーラ氏は、「昇進させてくれないので他社の面接を受けました」と言ってきたその社員が会社負担でプログラミングのコースを受講できるように手配した。しかし、大幅な昇給を得られなかったことを理由にその社員は転職したという。

 「できることを全て試してもうまくいかなければ、それならそれで仕方がないと思う」とカッチョーラ氏は言う。

 今の多くの新入社員にとって、出世を競うのは当たり前のことだ。キャリアに関する著作があるジュリー・ジェンセン氏は「この世代は親や教師など権威のある人たちから、目標を実現するために努力し、最高の結果を目指し、自分が欲しいものを要求していいと言われてきた」と指摘する。

 学校では1年単位の目標が決まっていてフィードバックも頻繁に得られるため、若者は昇進のスピードが企業や業界ごとに大きく異なる職場の実情をよく分かっていない――。こう語るのは、大卒者の就職支援や新入社員への助言を手掛けるアーリー・ステージ・キャリアーズを共同で創業したジル・ティポグラフ氏だ。同氏によると、若い社員は「ここで1年働いたんだから、もうすぐ昇進するはず」と考える。

 もちろん、学生ローンを抱える多くの若手社員は実際に金銭的なプレッシャーを感じている。インサイドアウトの調査ではローンを返済できると答えた人は3割にとどまった。

ヘッドハンティング会社ブルー・ロック・サーチ・グループ(テネシー州ノックスビル)のルベン・モレノ氏(50)は、新入社員がスキル以上の肩書を欲しがるケースが数年前から増え始めたと語る。

 ジョシュア・ジョーンズさん(31)は以前働いていた眼鏡の小売業者で5年間に2回昇進したが、満足できずに退社した。昨年、採用担当マネジャーとしてブルー・ロックに入社したとき、ジョーンズさんはモネロ氏に「私には明確な目標があります。それを実現できなければよそに移りたい」と言ったそうだ。ジョーンズさんは大きな成果を挙げ、半年後にヘッドハンティング担当のディレクターに昇進した。

 組織内の階層が少ないフラットな会社では昇進の機会はそう多くない。こうした企業では管理職が「横」の動きを用意している。アリ・コンさん(30)はシカゴのソフトウエア会社に勤めてほぼ7年になる。チームリーダーや予算アドバイザーを務めるなど、新しい挑戦を見いだすことを上司が支援してくれたからだという。プロジェクトマネジャーになったコンさんは「私は自分が役に立っていると感じたい」と話す。

 入社1年を迎えた社員をたたえる企業もある。企業向けにコンテンツ管理プラットフォームを提供するイグナイト(カリフォルニア州マウンテンビュー)では、デジタルマーケティングマネジャー、タイラー・ドゥさんがバルーンの飾りのついた「タゾ」ブランドのお茶をプレゼントされた。上司のコリン・ジョーダン氏がお祝いを提案、プレゼントを持つ笑顔のドゥさんの写真をツイッターに投稿した。

 こんなふうに仕事ぶりを評価すれば、フィードバックを求める若手社員の気持ちを満足させられるかもしれない。管理職が常に若手社員に意欲を持たせたり関わったりする方法を模索しているのは、会社の将来が若手にかかっているからだとイグナイトの人材担当バイスプレジデント、スー・ムルティ氏は語る。

 若手社員のほうもただむやみに昇進を求めるのではなく、準備をして機を見る必要がある。若手が無理なく、できるだけ速く昇進するコツは以下の通り。

・自分より経験のある同僚がどのようにキャリアを積んできたか調べる。

・少なくとも3カ月に1度は自分の成長と目標について上司と話し合う。

・努力して成果を挙げた証拠を示せないかぎり昇進を要求しない。

・新しいスキルを学ぶ機会を自分で探し出す。

・職場の文化について教えてくれ、助言を与えてくれる同僚を探す。

以上、Wall Street Journalより要約・引用しました。https://www.wsj.com/articles/the-office-rookies-who-ask-for-the-world-11554730098?mod=searchresults&page=1&pos=2

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