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転職後の仕事、見込み違いだったらどうする?

 

新しい仕事は、立派な肩書と高い報酬が伴う場合ですら、予想と違うことがある。

米国で会社を渡り歩く幹部につきもののこの問題に、足元の好調な労働市場が拍車をかけている。優秀な人材を採りたい企業は時に、現実に合わない強力な地位を約束してしまう。企業幹部を対象とした人材会社レインズ・インターナショナルのダン・スミス COOは「職務の重要性を大げさに説明したり、問題点を伝えなかったりすることで人材を獲得しようとする企業がある」と話す。

 そうやって雇われた側は順応すべきか逃げるべきか。全ては状況次第だ。2015年に フォード・モーター に雇われたジョン・カセサ氏を例にとろう。カセサ氏は投資銀行経験が長い自動車アナリストで、フォードでは投資を新製品・技術に振り向ける役割を担うことになっていた。関係者によると、カセサ氏はすぐ、職務遂行に際して想定していたほどの裁量を発揮できないと気づいた。当時のマーク・フィールズ最高経営責任者(CEO)が取締役会の全面的な支持を受けていないと、遅ればせながら気づいたのだ。この点、自動車産業に詳しいはずの元自動車アナリストですら、事前に取締役会の状況を把握できなかったという点も興味深い。カセサ氏は新たな世界戦略担当者として、状況の改善に望みをかけた。だが昨年5月、フィールズ氏が退任に追い込まれたことから、「本来できるはずの貢献ができない」との結論に至ったという。数カ月後、カセサ氏は退社した。

コンサルティング会社プライムジェネシスの共同創業者ジョージ・ブラッド氏は「企業の変化が目まぐるしいため、この種の経験は増えている」と指摘。人材会社ハイドリック&ストラグルズ・インターナショナルによる調査の結果を挙げて、「適応せずにとどまれば、転職して1年半以内に失敗する幹部40%の仲間になることはほぼ確実だ」と述べた。

去る幹部、残る幹部

仕事に失望して短期で辞めた幹部には、新しい会社について深く知ろうとしなかったケースが多いと専門家は話す。彼らの期待は、権限の範囲、スタッフの数、会社の財務体質、さらにはオフィスの規模まで、多くの面で打ち砕かれる。

テクノロジー業界での経験が長いプニート・ゴエル氏は、数年前に中規模テクノロジー会社の製品管理責任者を引き受けた時のことについて、事前にもっと調べるべきだったと話している。ゴエル氏は、同社に転職を検討していた当時、既に辞めていた前任者に接触し情報収集すべきであったと後悔した。ゴエル氏は、創業者でもあるCEOから自社ソフトウエアの競争力向上に向けた戦略青写真を作るよう指示され、製品戦略の策定を任せると約束された。しかし現実は、営業部長が同社製品に存在もせず、ゴエル氏の示した戦略青写真ともまった関係のない製品性能を顧客に約束してしまうような現場状況であった。ゴエル氏は、「営業部長は私が自分の仕事だと思っていたことをやりたがった。その点で私達はまったくうまくいかなかった」と説明している。営業部長は「私はずっとこうしてきたし、これがここのやり方だ」と言って自分のやり方を譲らなかったという。「ここには良い選択肢がない」との結論に至ったゴエル氏は、7カ月後に会社を辞めた。現在はアルファベット傘下のグーグルで製品マネジャーをしている。

経営コンサルタントのステファニー・スミス氏は、転職者と転職先企業の期待のミスマッチを防ぐため、求職者が対象ポストの詳しい職務内容を要求すべきだと話す。また、内定通知には、上司になる人物など重要な詳細が記載されていることを確認するよう勧めている。

ただ、綿密に計画しても十分とは限らない。スミス氏の顧客でデジタルマーケティングに精通したある企業幹部は、2017年に世界的な消費財メーカーのポストを受諾するに会社に書面を要求した。スミス氏によると、この顧客は革新的な部門で影響力を発揮しているトップの下で働くと聞いており、それは内定通知でも確認されていた。だが就業して数週間後には、その新しい上司によって旧来型の別の部門に異動させられた。理由の説明はなかった。スミス氏によると、この顧客はだまされたと感じており、今も仕事に納得していない。与えられた職務は想定に比べて、名声や仕事面での成長機会が少ないからだ。もともと応募した部門でのポストを要求し続ける意向だという。

新しい仕事が予想と違うケースには、入社するまで雇用主の本当の財務状況が分からないことが原因となることもある。シアトルでアマゾン・ドット・コムのゼネラルマネジャーをしていたダン・パーク氏のケースは、当初の期待と異なる状況が、逆に彼のキャリアアップの機会となったケースだ。同氏は、昨年9月にバンクーバーに転居した。住宅用の資材や設備などをネット販売するカナダの新興企業ビルドダイレクトで、同社初のCOOの仕事をするためだった。パーク氏は「会社の事業に波があることは知っていた」。だがすぐに、直近の資金調達ラウンドが成立しなかったことや、数百万ドルの債務があることを知って驚いた。取締役会はCEOを退任させ、COO就任6週間のパーク氏を後任に指名。翌日には、財務再建を目指す不振企業を対象にしたカナダ法の下で会社の資本構成変更に乗り出した。パーク氏は「スキーの上級者ゲレンデの頂上に立って、どうやって下りようかと思案している気分になった」と話す。会社は3月に法律の保護下を脱した。現在、「ビルドダイレクトは創業以来で最高の財務状況にある。私のキャリアにプラスの経験だ」とパーク氏は語っている。


転職には常にリスクが伴う。雇用側は求職者に情報をすべて開示しない場合がほとんどであるし、会社や人々を取り巻く状況は常に変わるからだ。求職者側はそれでもオファーを受ける前に最大限の情報収集努力をし、職場の人間関係や直属の上司の性格等、ソフトな情報を収集する努力を怠ってはならない。

 

以上、Wall Street Journalより要約・引用しました。

https://www.wsj.com/articles/what-to-do-when-that-shiny-new-job-isnt-the-right-fit-1527707998?mod=searchresults&page=1&pos=1

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