米大都市における犬の散歩のアルバイト - ハーバード並みの難関。合格率5％

2017/10/16

今日は簡単そうに見えるアルバイトの意外な事実を紹介する。

スターバックスのバリスタをしているアレック・グラシアさん（23）は、楽しみながら簡単に小遣いを稼ぐため、イヌの散歩のアルバイトをしようと思った。しかし、採用されなかった。不合格を知らせるメールを送ってきたのは、カリフォルニア州サンディエゴを拠点とするドッグウォーカー仲介アプリ「Wag!（ワグ）」だ。30日たてば再び応募できるとしながら、その間「地元の動物保護施設などでボランティアをしてペットの安全に関する技術を磨く」よう勧めてきた。

グラシアさんがドッグウォーカーの試験に落ちたと聞いたシアトルの同僚たちは、容赦なくからかった。グラシアさんは「経験が必要な仕事だとは思いもしなかった」と話す。

しかし、米国の多くの都市では、ドッグウォーカーとして採用されるのは一流大学の入試に合格するより難しい。12万人を超えるウォーカーを擁するシアトルのペット関連アプリ「ローバー」では、合格率はわずか15％。米298都市で展開するワグでは5％だ。ニューヨークのマンハッタンには、国内のほかの全地域の総計を上回るウォーカーの雇用があるが、合格率はさらに低い。

エマーソン大学で映画を学ぶイーサン・ジュデルソンさん（21）さんは、昨年ニューヨーク市のワグにウォーカーの応募をした。最初の審査は通過したが、電話面接中に突然はじかれた。イヌが散歩したがらない時に、そのイヌの目を見るかどうか聞かれ、そうだと答えると、「面接は続けられません」と言われたのだ。「正解は教えてくれなかった」という。

　ニューヨークでイヌの訓練士をしているユルアニ・オルグインさんによると、イヌは目をのぞき込まれると脅威を感じる可能性がある。ただ、ジュデルソンさんに対する質問は「大まかすぎて、一般的な答えを出すのは難しい」という。

ドッグウォーカーにとって今ほどいい時期はないことを示す数値もある。カリフォルニア州の市場調査委会社IBISワールドによると、米国では全世帯の65％でペットが飼われており、ペット保有率が史上最高の水準にある。このうちネコやイヌは約1億6000万匹だ。この増加がイヌの散歩業界の追い風となっている。IBISワールドのリポートによると、同業界の年間売上高は過去5年で3.7％増加し10億ドルに達した。企業側が特別なサービスを提供するニューヨーク市のような場所では競争が激化している。

実際ニューヨークではイヌの散歩業者は、電話帳に載っているだけで312社に上る。そのうちブルックリンのケイナイン・ランニングは、数匹まとめてではなく１匹ずつの散歩を行っている。不安を抱く飼い主への対応として、GPSの追跡情報をリアルタイムで送信する業者も複数ある。ワグとローバーのウォーカーは、トイレ休憩の正確な位置にしるしをつけたり、終了後の写真を送ったりしている。

専門知識を証明するのは容易ではない。ワグには毎月「数万件の応募がある」と創業者のジョシュア・バイナーさんは話す。業者の中には、応募者をふるいにかける際、イヌへの愛情がお金の必要性を上回っていると話す応募者を優先すると話すところもあった。採用されたと喜ぶ候補者1人の陰で、数千人がはねられている。

採用されることも難しいが、採用後のオンデマンドのアプリ操作も難しい。ウーバーのように、ドッグウォーカー側が要請に応じる仕組みだ。飼い主はウォーカーの指名もできるが、割り当ては通常ランダムだ。

イヌの散歩アルバイトに合格したブルックリンの学生ウィロー・クイレンさん（20）は、「たいていは直前に仕事の知らせが来る」と話す。お金をもらってイヌと遊ぶのは「すばらしい」が、顧客の大半は約5～6.5キロ離れた場所にいる上、30分以内に到着しなくてはならない。車がないと厳しい。

　仕事場がそれほど離れていては、30分の散歩で15～25ドル稼いだのでは割に合わないと話すウォーカーもいる。6月にワグでドッグウォーカーを始めたロサンゼルスのアンドリュー・ゲルングロスさん（56）は「たいがいの場合、暮らしてもいけず、特に管理しやすいというわけでもないスケジュールに縛られることになる」と述べた。