仕事が好きなワーカホリックなら健康に害はない
「ライフ・ワークバランス」とう言葉も概念も定着し、「長時間労働=鬱病や成人病の原因」という風潮が日本でも増えてきたが、実際、仕事が好きで長時間働く人にとってはその式は成り立たないようだ。仕事が大好きな人であれば、ワーカホリック(仕事中毒)になっても健康には大きな害は及ばないことが新たな研究で判明した。
ワーカホリックはその名が示す通り、身体的・精神的健康に害を及ぼすものとされる。50年前にその概念を提唱した米心理学者ウェイン・オーツ氏は、薬物中毒と似た症状だとしていた。しかし、単に長時間勤務による影響なのか、それとも仕事中毒による影響なのか区別するのが難しいため、ワーカホリックに関する研究は結論に至っていなかった。
学術誌「アカデミー・オブ・マネジメント・ディスカバリーズ」に掲載された新たな研究論文によれば、長時間働く人と強制的に長時間勤務を強いられる人の健康状態に違いがあるだけでなく、ワーカホリックの中でも仕事を楽しんでいる人とそうでない人の間に違いがあることも確認された。
研究は国際的な金融コンサルティング企業の従業員を対象に実施。勤務時間、プライベートや仕事での人間関係、自身の健康について感じていること、そして睡眠や頭痛にまつわるトラブルといったストレス関連の項目についてアンケート調査を実施した。調査対象者は「何か仕事をしていないとリラックスできない」や 、「仕事をしている自分が強く精力的に感じられる」といった項目に自分にどの程度当てはまるかを点数で答えた。アンケート後は763人が医療検査を受け、心臓疾患や糖尿病といった深刻な健康問題のリスク要因を調べた。
その結果、単純に長時間働き続けただけでストレスに関連する疾患や高血圧などのより深刻なリスク要因につながるわけではないことが分かった。調査結果ではワーカホリックとストレスに関連する身体的疾患を訴える人に相関性が見られた。その相関性とは、仕事に積極的には関わっておらず、追い詰められている感覚を持って働いていると語るワーカホリックのみが、深刻な健康リスクに陥る傾向が見られたという。
研究論文の共著者の1人、加サイモンフレイザー大学ビーディー・スクール・オブ・ビジネスのリーカ・テン・ブラメルヒュイス准教授は、仕事量と健康の関係は、本人が仕事に「積極的に関わっているかどうかが鍵だ」と述べた。
ブラメルヒュイス氏や他の共著者は、仕事が好きなワーカホリックの場合、必要な時は家でも職場でもさまざまなサポートをオープンに受け入れようとするため、より健康的なのだろうと推測している。また同氏は、企業は従業員をなるべく長く仕事に関わらせて多く働かせようとするのではなく、仕事内容を楽しんでもらえる方法を考える方が理にかなっているとも続けた。
ブラメルヒュイス氏は、ワーカホリックの人たちもなぜそこまで仕事に力を入れるのか自問するべきだとし、「もし仕事が好きだからということなら、まい進すればいい」としつつ、「そうでない場合は、精神や肉体の健康状況に気をつける必要がある」と話す。
好きな仕事に就けるよう努力をし、好きな仕事に就いて長時間労働を楽しむことができれば、仕事の成功も健康も両方手に入る素晴らしい人生となりそうである。
以上、Wall Street Journalより要約・引用しました。
https://www.wsj.com/articles/when-its-ok-to-be-a-workaholic-1504620000
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