ホテル大手と旅行サイトとの縄張り争い本格化

2017/06/02

出張や旅行の際に、エクスペディアやBooking.comといった旅行サイトを使ってホテル予約をする人は多いのではないだろうか？旅行サイトの存在感は大きく、少なくとも過去一時期においてはホテルと旅行サイトの関係がウィン・ウィンであった。しかしその関係は変わりつつあるようである。

ホテルチェーン大手がオンライン上の縄張り争いに参入している。その相手は他でもない、これまで自分たちのビジネスに貢献してきた旅行サイトだ。

　マリオット・インターナショナル、ヒルトン・ワールドワイド・ホールディングス、インターコンチネンタル・ホテルズ・グループは、エクスペディアやプライスライン・グループなどの旅行サイトから事業を取り戻そうと、大々的にマーケティング攻勢をかけている。こうした旅行サイトは顧客を宿泊へと導く一方で、予約ごとに最大30％の手数料を取る。各チェーンにとって旅行サイトはビジネスパートナーとしての価値が下がり始めており、むしろホテルと顧客との間に立ちはだかる門番のようになりつつある。

大手ホテルブランドの多くは、オンラインの旅行代理店ではなく直接自社のサイトで予約する会員を対象に、宿泊料金の割引といった特典を提供している。

だが、旅行を計画する上で旅行サイトは欠かせないツールになっているため、業界の取り組みは難航している。旅行業界の調査会社フォーカスライトによると、昨年は全世界のホテル予約のうち990億ドル（約11兆円）相当がオンライン旅行代理店によるものだった。

旅行データ会社のアダラが実施した調査では、18歳～34歳の米旅行者の52％が、ホテルのウェブサイトではなくオンラインの検索エンジン経由でホテルを予約すると回答した。35歳以上では37％だった。調査では若年層がホテルの特典に関心が低いことも判明し、価格に敏感な消費者に対する顧客ロイヤルティーの重要性に疑問が浮上している。航空券やレンタカーとのパッケージや数々のオプションを提供するという理由で旅行サイトを利用する人は多い。

オンライン旅行代理店とホテル業界は「ライバルであり友である」という関係が20年近く続いている。エクスペディアやプライスラインといったサイトは、2001年の米同時多発テロ後などの低迷期にはホテルにとって重要な存在だったが、それ以降は予約全体に占めるシェアを徐々に奪っている。

一方、大手航空会社と予約サイトとの競争はそれほど目立っていない。航空会社はホテルチェーンよりはるかに数が少ないためだ。だが、ホテル各社はインターネット時代に多くの業界を悩ませるジレンマに直面している。というのも、オンラインの仲介業者は顧客との重要なパイプラインを提供するが、結果的に利益をむしばむ。オンライン旅行代理店が予約ごとに課す10％～30％の手数料は、ヒルトンやマリオットなどの大手ブランドへ前もって手数料を支払っているホテルのフランチャイズオーナーにとって大きな負担となる。

ホテルの予約額（税・手数料込み、単位：10億ドル）