ソフトバンクの10兆円ファンドを指揮する人物
ソフトバンクの孫氏の掛け声で設立する1000億ドル(10兆円)規模の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」は、誰が采配を振るのか。同社のインド人幹部、ラジーブ・ミスラ氏(54)だ。同氏は2000年代にドイツ銀行の大規模なクレジットデリバティブ部門を築き上げた人物であり、現在はソフトバンクが2013年に買収したものの、業績に苦心している携帯大手のスプリントの立て直しに奮闘している。ミスラ氏以外にも、元債券トレーダーやウォール街の営業担当者などがソフトバンク・ビジョン・ファンドのチームを組む。中東の王族に人脈をもつドイツ銀行やゴールドマン・サックスの出身者3人も加わった。金融の仕組みに精通し、大富豪の投資家に顔が利くこのチームは、孫氏がソフトバンクを次世代技術のインキュベーターに脱皮させるためのカギを握っている。
ファンドに出資するのはソフトバンクのほか、中東の複数の政府系ファンド、さらにウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が報じたように、アップル、クアルコム、オラクルのラリー・エリソン会長などが名を連ねる。
ファンドの主役はもちろん孫氏だ 。これまでも技術分野の投資に実績がある孫氏は、直感的な決断で知られる。中国の起業家、馬雲(ジャック・マー)氏には会って5分で投資を決めたという。馬氏の阿里巴巴集団(アリババグループ)が2014年に株式を上場したとき、2000万ドルの投資は580億ドル相当に膨れあがっていた。
ただその帝国にも限界が見える。ソフトバンクには1000億ドル以上の負債があり、孫氏は昨年10月に「これ以上のレバレッジは難しい」とベンチャービート誌に語っていた。
近くスタートする「ビジョン・ファンド」は他人の資金を使い、大がかりな事業拡張を可能にする切り札となる。しかし、現実的な課題がないわけではない。
1つは新興企業の評価額が上昇する中で割安な投資先を探すことだ。実際、ソフトバンクが昨年の英半導体大手ARMホールディングス買収に費やした320億ドルは高過ぎではないかと多くの投資家が疑問視している。また、ファンドの巨大さゆえに成熟した大企業を標的にする必要がありそうだが、そうした企業は投資リターンを生みにくい。例えばスプリントは同業のTモバイルに抜かれ、米携帯3位から4位に転落した。さらに、ソフトバンクへの課税を避ける形で投資案件を組めるかという問題がある。
こうした問題を解決するのが、ロンドンに拠点を置く金融業界の切れ者のチームだ。約15人のアナリストが最近、ヘッジファンドや富裕層向けテーラーが集まるメイフェア地区にオフィスを開設した。
ソフトバンクの戦略金融部門を率いるミスラ氏は、かつてバンカーとして孫氏を担当し、同社が以前行った通信企業買収で借入金の調達を任された。ニューデリーの中間層家庭に生まれ、米ペンシルベニア大学で工学を修めたミスラ氏は、1980年代はロスアラモス国立研究所で働いたが、のちに金融業界に転身し、メリルリンチのトレーディング部門に加わった。1996年にドイツ銀行に移籍。10年間で同行のクレジットトレーディング業務をウォール街有数の高収益部門に成長させた。ミスラ氏は複雑さを増す新しい金融商品への関心が高く、利益をもたらすアイデアを次々に試したと元同僚は話す。
同行の元トレーダー、マーティン・ベルビシ氏はミスラ氏を「創造の天才」と呼ぶ。ほかの同僚らには、疲れ知らずでプレッシャーに強く、一風変わった人物だと映る。
ミスラ氏はその後、UBSの債券部門を経て、投資会社フォートレス・インベストメント・グループに移籍。2014年に孫氏と再会し、ソフトバンクに迎えられることとなった。
ファンドのチームにはミスラ氏のほか、中東の政府系ファンドとの橋渡し役を務めるゴールドマン元幹部の Saleh Romeih氏がいる。また、ドイツ銀とゴールドマンで要職にあったNizar Al-Bassam 氏と Dalinc Ariburnu氏は昨年、孫氏をサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン副皇太子に引き合わせ、450億ドルの出資を取りつけるのに一役買ったという。
ソフトバンク・ビジョン・ファンドの設立ニュースは非常にエキサイティングであり、その設立・運用チームも精鋭集団であるようだ。今後の展開が非常に楽しみである。
以上、Wall Street Journalより要約・引用しました。
http://www.wsj.com/articles/the-wall-street-trader-behind-softbanks-100-billion-fund-1484087822
Rajeev Misra, who built Deutsche Bank’s massive credit-derivatives business in the 2000s, is a top lieutenant to SoftBank chief Masayoshi Son and a leader on the entrepreneur’s next big thing: a $100 billion fund to invest in futuristic technologies.
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