KKR、従業員に優しい投資会社を目指す
米投資ファンド大手のKKRは、巨額の金融取引に関わる厳しく長時間勤務の業務を、なるべく従業員とその家族の生活に犠牲を強いないようサポートする実験を開始した。
ニューヨークに拠点を置くKKRは、親になったばかりの従業員に気前の良い福利厚生を提供し始めた。そうした手当の中には、生後一年間の出張の際、乳児とベビーシッターを出張に同行させるための費用を会社が持つというものまである。また、母親の出産休業「Maternity Leave」と父親の育児休業「Paternity Leave」という名称を性別で区別しない「育児休業(Parental Leave)」に公式に改め、主たる養育者の有給休暇を16週間に拡大し、休暇に入る従業員、仕事に復帰する従業員に助言を与えるコーチも雇った。また、出張中の母親が母乳を自宅に届けられるようにその送料を負担し、無制限の不妊治療費まで提供するという。
従業員や経営幹部たちはこうした方針転換について、プライベート・エクイティ投資会社の仕事は過酷で、頻繁な出張や週70時間超労働が当たり前となっているので、KKRの従業員が仕事と家庭生活を両立しやすくするための歓迎すべき第一歩だと話している。それでも、金融業界で働く親のストレスが完全に解消されるわけではないということはKKRも認めている。
女性は同社の中核となっている510人の投資プロの18%を占めている。有能な女性従業員の採用と引き留めが同社の目的の一つとなっている。より多くの父親に育児休暇の取得を促すという狙いもある。KKRによると、今年に入ってから女性従業員の数は約4%も増加しているという。
世界中に約1200人の従業員を抱えるKKRの最高人事責任者、ロバート・ゴットリーブ氏は「こうした制度導入は必要だが、優秀な人材をつなぎとめるための万能の解決策ではない。依然と比べればかなりの進歩を遂げてきたが、実際のところ、いろいろな面でまだ道のりは長い」と話す。ゴットリーブ氏が目指しているのは仕事量の削減ではない。同社は在宅勤務を増やしたり、パートナーを目指さない従業員のために代わりの昇進経路を作るなど、家族がいる従業員が仕事と家庭生活を両立しやすくする方法を模索している。
KKRがこのような制度を導入し始めた背景には、数年前にとった統計がある。まだ子供はいないが、同社が家庭のニーズに合っていないのではないかと懸念した若い女性アソシエイトたちが次々と退社していたのである。また、子供を産んだKKRの女性従業員の一部が出産休暇の全てを消化することに居心地の悪さを覚えていたという調査もあった。誰かに言われたわけではないが、「育児休暇中も働かなくてはならない」という暗黙の期待のようなものがあったのだ。日本の一般職場環境と似ているではないか。
以上、Wall Street Journalより要約・引用しました。
http://www.wsj.com/articles/high-finance-and-family-friendly-kkr-is-trying-1474623001
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