スタープレーヤーの転職に、忠実な部下はついていくべきか
あなたがとても信頼し、自身のそれまでのキャリア向上に大きな比重を占めてきたスタープレーヤーの上司が、ある日「転職する。君も来るか?」と言い出したら、あなたはどうしますか?
スタープレーヤーを欲しがる会社はたくさんいます。でもスタープレーヤーの影には、優秀な部下とチームがいるものです。優秀な人材であればあるほど、転職の際にはチーム丸ごと引き連れていきたいと思うのが当然です。転職先での地位が執行役員級である場合は、尚更チームごとの転職が必要と考えます。株主はスタープレーヤーの採用が短期間で好結果をもたらすことを期待しており、スタープレーヤーは転職先でそのプレッシャーに直に晒されます。たいていの場合、転職後悠長に新チームを組成する時間はありません。
部下は部下で、相性が良く忠誠心を捧げる上司の転職に一緒について行き、更なるキャリアアップを図りたいと思うのは当然です。でも決断の前には転職先でのリスクも考慮しなければなりません。フォロワーであることは、上司にとってはありがたい話であり、またうまくいけばあなたのキャリア向上にもつながりますが、上司が必ずしも転職先で成功を納めるとは限りません。また上司が転職することにより、自身の現在の職場での活躍の場が広がる可能性を絶好のキャリア機会として考慮する必要もあります。
もし上司に転職の話を持ちかけられたら、まずその転職先の状況を詳しく把握する必要があります。上司に書面による「仕事内容」を求め、自身の新しい役割について上司と同レベルの理解をしておく必要があります。転職先にて上司に求められている役割が、「現状維持の上の更なる成長」ではなく、「斬新な経営改革」である場合、フォロワーにとってのリスクは大きくなります。
一つ例を挙げましょう。A社でJ氏の下で働いていた5人の社員は、J氏がP社に転職した際、一緒について行きました。J氏はP社の戦略をてこ入れし、売上げの回復を担いました。しかし計画は失敗し、J氏は17ヶ月後にP社を解雇されました。J氏に追随した腹心の部下たちの内、1人はA社に戻りましたが、4人は他社への転職を余儀なくされました。
また、上司が転職先にどの程度の期間コミットするつもりであるのかも知っておく必要があります。転職先の環境が、上司なしではあなたにとってあまり居心地のいい職場ではない可能性もあるからです。上司との信頼関係は強くとも、転職先で新しい同僚達の信頼を勝ち取ることはまた別問題でもあります。
別の一例を挙げましょう。D氏は長年の部下を説得し、米国の新エネルギーの会社、CP社に一緒に転職しました。この転職はD氏の部下にとっては米国中部から米国西海岸への転居も伴い、家族全員の生活を変える大きな決断でした。しかし、17か月後にD氏はCP社を辞める決断をします。別の製造メーカーに転職するためです。D氏の部下は非常に落胆し、今回はD氏の転職には付き合いませんでした。D氏に梯子を外されたと感じた部下とD氏の間で、長年培ってきた信頼関係に大きく毀損が生じます。そしてその2年後に、部下はCP社を退職しました。
強い信頼関係で結ばれている上司の転職は、あなたにとってフォロワーであり続けるかどうかを見極める重要な機会でもあるのです。
以上、Wall Street Journalの以下の記事から要約引用しました。
http://www.wsj.com/articles/should-you-follow-an-old-boss-to-a-new-job-1448410814
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