Dell、EMCを670億ドルで買収 - IT業界屈指の買収規模
10月12日、米パソコン大手Dellは、プライベート・エクイティ・ファンドのシルバーレイク・パートナーズと共同で、米ストーレージ機器大手EMCを670億ドル(約8兆400億円)で買収すると発表しました。IT業界では過去有数の大型取引となります。両者はDellが新たに発行する普通株やトラッキングストック(部門業績連動株)、新規借り入れ、手持ち資金などを組み合わせて買収額を支払います。
一株当たりの買収額は33.15ドルと、EMCの9日終値を19%上回る予定。Dellには既に約120億ドルの債務がありますが、買収の為の追加借り入れによる財務条項はないとのこと。Dellは2016年5-10月の間に取引を完了され、新会社を発足できると見ています。新会社は発足から1-2年の間、「迅速な債務圧縮に集中する」とのことです。
EMCで長期にわたりCEOを務めたJoe Tucci氏は取引完了後CEOを辞任し、バトンをDellのMichael Dell会長兼CEOに引き継ぎます。
EMCが約80%出資する仮想化ソフトウェア大手VMWare Inc.は今後も上場企業として存続します。EMC株主はDellの買収で一株当たり現金24.05ドルに加え、VMWareの持分に連動したトラッキングストックも受け取ります。VMWareの時価総額は約330億ドル。EMC株主は1株につきこのトラッキングストックを約0.111株受け取る見込みです。
EMCは昨年終盤、今後の事業戦略を見直していると明かしており、またアクティビスト・ファンド、エリオット・マネジメントは昨年EMC株を約2%取得して以来、VMWareをスピンオフするように迫っていました。両者は今年1月、エリオットがEMCに公に圧力をかけることを禁じるスタンドスティル条項を結びましたが、その期限は先月切れていました。
一方デルは、2013年に創業者のMichael Dell氏とシルバーレイクによるMBOで非上場化。その後はタブレット型端末やスマートフォンの台頭で厳しくなったパソコン事業から、より利益率の高いストーレージ、セキュリティー事業などへの方向転換を図っています。EMC買収でDellは消費者を主な顧客とするパソコンメーカーから大企業向けテクノロジーを扱う企業への移行を確固たるものとします。
案件の内容もインパクトがありますが、今回はその規模も注目を集めています。本件は広義のIT業界の中では、2001年のAOLによるTime Warner買収(1,060億ドル)に次ぎ、史上二番目の規模となります(ただし、Time Watnerは当時メディア企業であり、IT企業ではなかったことから、これを比較に入れることには疑問もあります)。本件に次ぐ買収金額案件はFacebookによるWhatsapp買収時の190億ドルですが、それでも本件の4分の1程度の規模です。
以上、Wall Street Journal及びVenturebeat紙より要約引用しました。
http://www.wsj.com/articles/dell-to-buy-emc-for-67-billion-1444649012
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