ウォール街を後にするベテラン投資銀行家たち
Hugh McGee氏は今年4月、バークレイズの米国投資銀行部門最高責任者の地位を去りました。彼の2013年のボーナスは1300万ドル、同行の中で最高所得を受け取っていたにも関わらずです。「バークレイズに勤めた6年の中で、懐かしく思い出すのはプロゴルファーのPhil Mickelsonとオフサイトで一緒にスイングを振った時だけだよ」と彼は語ります。
McGee氏はリーマン・ブラザーズ破綻以前は、同社の最も優秀なディールメーカーでした。「バークレイズの投資銀行最高責任者になってからは、法規制コンプライアンス、そして内部コンプライアンス。勤務時間の8割は顧客とは全く関係ない仕事に割かざるを得なくて、それは私にとって楽しい仕事ではなかった」とのこと。
しかし現在56歳のMcGee氏は投資銀行業務自体を諦めたわけではありません。彼はバークレイズ退社後、地元テキサスに戻り、Intrepid Financial Partnersというブティック投資銀行を設立しました。Intrepid Financial Partnersには、元モルガンスタンレーのSimon RobeyやPaul Taubman、そして元UBSのSimon Warshawも合流。この三人もウォール街やロンドン・シティのバンカー生活に終止符を打ってテキサスの小さなブティック・ファームに移籍したのです。
金融危機後の銀行業務規制厳格化は高リスクのトレーディングや貸出しの規制に関するもので、従来の投資銀行アドバイザリー業務を規制するものではありません。McGee氏達のような骨入りの投資銀行家達は、築き上げてきた顧客とのリレーションを基に、純粋にアドバイザリー業務を続けていきたいと思い、アドバイザリー業務とは直接無関係の規制に身動きがとり辛くなっている大銀行にいることに疑問を感じたのです。
McGee氏と同様にブティック投資銀行を立ち上げたバンカー達は、「私たちのプロダクトはアドバイザリー業務だけだ。大銀行の時は、その他多くのプロダクトを顧客に売っていたので、銀行プロダクト部署間の軋轢やコンフリクトもあった。今の方が自由に顧客に助言ができて、顧客もそれを喜んでいる」と言います。実際M&Aアドバイザリーのリーグテーブルを見ると、2014年に小規模ブティック・ファームが手掛けた案件は全案件数の16%と、2008年の倍の比率になっています。
果たして、こういった小規模ブティック・ファームの息は長いのでしょうか?ブティック・ファームの弱点は、顧客がいわゆる「ワンストップ・ショッピング」ができないことにあります。大手銀行は、顧客にはM&Aアドバイザリーと買収ファイナンスをセットで売ろうとします。ブティックにできるのはアドバイザリーだけです。またブティック・ファームが増えるにつれ、競争も激しくなっています。
ブティック・ファーム設立の波は1980年代まで普通にありましたが、1990年以降下火になります。金融業界の規制緩和が進み、銀行が商品のクロス・セルに力を入れるようになったからです。より多くのプロダクトを持つべく、金融機関同士の買収合戦が繰り広げられたのも90年代です。現在、流れは変わり、銀行の細分化が進んでいるように見受けられます。
以上、Financial Timesから要約引用しました。
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/d99d271c-5545-11e5-8642-453585f2cfcd.html#axzz3lKfkb58U
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