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ライス元米国務長官「コロナで仕事の不平等が露呈」

 

在宅でも仕事ができる知識労働者とそうでない小売店従業員や零細事業者の差が拡大した

――筆者のコンドリーザ・ライス氏は米スタンフォード大学フーバー研究所所長。2005~09年に米国務長官を務めた。ワクチン接種が進み、長いコロナ禍の出口が見え始めた米国で、筆者はこの1年強を振り返っている。そしてコロナ禍により知識労働者とそれ以外の労働者の格差が一段と広がったことに強い懸念を訴えている。

私は1年以上、米国から出ていない。そんなに長い間出ていないのは23歳以来だ。

 2020年3月4日、私はオックスフォード大学とロンドン市内で講義を行うため、英国に10日間滞在する予定だったが、行かなかった。そのことに不満は全く感じていない。かつてのように旅をしたいとはもう思わないようになった。

 自宅での仕事はうまくいっている。昨年9月1日にフーバー研究所の所長に就任したが、オフィスには一度しか行っていない。それでも会議や研究活動はリモートで続けており、移動がもはや障害ではないため参加率は上がっている。オンラインセミナーは(フーバー研究所のあるカリフォルニア州)パロアルトに来る機会はなかっただろう人たちにも届いている。私たちは生産的で効率的だ。だがスタンフォードはゴーストタウンと化している。学生のいない大学は異様に感じる。

 プライベートな時間には、リモートで筋力トレーニングとピラティスを行っている。ズームでピアノのレッスンも受けている。昨夏はショパンのバラード第4番ヘ短調に徹底的に取り組んだ。私のピアノの先生は引退してペンシルベニア州に引っ越したので、今後は「バーチャル」でレッスンを続けていくだろう。2020年以前なら考えもしなかったことだ。それからゴルフはソーシャルディスタンシング(社会的距離の確保)にはうってつけであり、外出する理由となる。

 全てがうまくいったわけではない。愛する人4人の葬儀はズームを通して執り行われた。イースター(復活祭)はオンラインで家族の顔だけが映された画面を見ながら祝った――今年もまたそうなりそうだ。家族や友人と一緒に過ごす休暇が恋しい。

 それでも、新型コロナウイルスのパンデミックに見舞われる中、私の生活はかなりうまくいっており、そう口にすることに少し罪悪感もある――非常に多くの人にとってはまさに困難でしかないからだ。

 米国内で起きている仕事の不平等について懸念している。パンデミックでそれが鮮明になった。在宅で仕事ができ、変わらずに生産的でいられる私のような知識労働者は、失業したウエートレスの現実とは全く別の場所にいる。最貧困層の子供たちを中心に学ぶ機会が失われていることも心配だ。学校再開がなぜ最重要視されなかったのか理解できない。

 パンデミックのさなかに、国内で不快極まりない対話がなされていた。エリート層が懸命に働こうとする小規模事業者たちに対して「ロックダウン(都市封鎖)が必要だと分からないのか?」とばかにしたのだ。そんなことは分かっているが、在宅で仕事ができて給料が確実にもらえる立場にあれば、言うはやすしだ。集まって礼拝を行いたいと考える信心深い人たちへの批判は大嫌いだったが、なぜ彼らがマスクをしないのかは理解できなかった。私たちは皆、批判ばかりしていて、お互いの身になって考えることができなかったようだ。

 私たちの行動に嫌気が差すようになったまさにその頃、10代の若者がが近所の高齢者に食べ物を届けたり、看護師がコロナ重症患者に最後にもう一度ビデオ通話アプリ「フェイスタイム」で妻が夫と会えるようにしてあげているというニュースを見た。大小問わず、称賛すべきたくさんの思いやりがあった。私たちは大丈夫というサインがそこにはあった。

 この1年は、不安やいら立ちを覚えるときもあれば、新たな発見をしたり他人に対して前向きな気持ちになれたりするときもあった。私たちは予期せぬ出来事とうまくやっていくことを学んだ。予期せぬことと言えば、私が応援するクリーブランド・ブラウンズ(米プロフットボールNFLのチーム)が今シーズンのプレーオフで1勝した。来シーズンは――うまくいけば――プレーを見に行けるかもしれない。

以上、Wall Street Journalより要約・引用しました。
https://www.wsj.com/articles/condoleezza-rice-on-the-pandemic-year-the-inequalities-of-american-work-11616159166?mod=searchresults_pos3&page=1

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