インテルの優位崩せるか、AMDとエヌビディア
大型買収で半導体業界トップに挑む
米半導体業界で台頭しつつある2社が、新型コロナウイルス流行に伴うチップ需要を追い風に大型買収を繰り出し、市場を長年支配してきたインテルの地位を切り崩そうとしている。
業界はこれまでインテルと中規模企業、ニッチプレーヤーで成り立ってきた。だが今年、コンピュータープロセッサー市場で長らく弱者だったアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)と画像処理半導体(GPU)を手掛けるエヌビディアが、業界最大手に対抗するため過去最大級の挑戦を仕掛けている。
パソコンのプロセッサーで最もよく知られるAMDは10月27日、同業の米 ザイリンクス を350億ドル(約3兆6600億円)で買収すると発表した。買収は株式交換方式で実施される。ビデオゲームやPC、法人向けサーバーの需要が急増する中、AMDの株価は年初来約80%上昇している。
一方、エヌビディアは9月、 ソフトバンクグループ から英半導体設計大手アーム・ホールディングスを400億ドルで現金と株式で買収することで合意した。買収金額は業界で過去最大規模となる。これによりエヌビディアは、アームが設計するチップに支配された好調なスマートフォン市場への参入を果たす。エヌビディアの株価は年初から2倍超値上がりしている。
AMDとエヌビディアによる買収はいずれも国内外の規制当局の承認待ちだが、実現すれば両社は米半導体業界の象徴的存在であるインテルとより対等な立場になるだろう。AMDのリサ・スー最高経営責任者(CEO)は、開発コストが上昇し、顧客からより多様なチップを求められている業界環境において、事業規模が大きいことはプラスだと述べた。
業界では長年、主に比較的小規模な買収を通して再編が行われてきた。だが今年の取引は前例のない状況を作り出しつつある。一部買い手企業の株価が急騰し、買収の金銭的手段をもたらしているためだ。
エヌビディアの時価総額は今年、業界首位のインテルを上回り、3300億ドルを超えた。人工知能(AI)の計算処理に必要なチップでの強みや、データセンター事業の成長などが評価されている。
ただ、エヌビディアとAMDが大型買収によって成功するかは全く定かではない。AMDはザイリンクス買収により、インテルからの市場シェア奪取に集中できなくなる可能性があると指摘するアナリストもいる。また両社とも売上高ではインテルに大きく水をあけられている。インテルの昨年の売上高が約720億ドルだったのに対し、AMDは67億ドル、エヌビディアは109億ドルだった。
規制当局や地政学的緊張のせいで買収が破談になる可能性もある。トランプ政権は米半導体大手ブロードコムによる同業クアルコムへの1170億ドル規模の敵対的な買収提案を阻止した。実現していたら業界最大の買収となるはずだった。
ただエヌビディアとAMDの最近の成功は、両社のビジネスモデルの強みを浮き彫りにしている。高性能チップの設計に注力し、製造は 台湾積体電路製造 (TSMC)や韓国サムスン電子といった受託生産企業などに任せるというものだ。
一方、インテルはチップの設計、製造ともに手掛け、最先端の工場建設にばく大なコストをかけている。このところ製造に関する問題を抱えており、自社工場で高性能チップの生産が間に合わない場合、他社に一部委託する可能性がある。競合他社の株価が上昇する中、インテルの株価は年初来20%超下げている。同社が2020年の通期売上高が過去最高になるとの見通しを示しているにもかかわらずだ。
AMDは性能基準でインテル製品に匹敵するかそれを上回る新たなチップを投入し、この10年余りで最大の攻撃をインテルに仕掛けている。AMDのPC向けチップ売上高シェアは4-6月期に17%超に達した。3年前は8%程度だった。実質的にインテルがその他すべてを占める。
エヌビディアもジェンスン・ファンCEOの下でインテルへの挑戦を拡大している。今年はアーム買収計画に加え、高速コンピューターネットワーク技術を手掛けるイスラエルのメラノックステクノロジーズを70億ドルで買収する取引を完了した。
インテルの直近の大型買収は2年前で、画像認識用半導体を手掛けるイスラエル企業モービルアイを153億ドルで買収した。今年は乗り換え案内アプリ開発のイスラエル企業ムービットを約9億ドルで買収している。
以上、Wall Street Journalより要約・引用しました。
https://www.wsj.com/articles/amd-nvidia-chip-away-at-intels-semiconductor-dominance-11603909252
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