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日本の地方銀行 逃げられない構造改革圧力

 

ほぼデフォルト(債務不履行)がない国での銀行経営と聞けば簡単そうだ。だが日本の銀行は全くそうではない。日本の金利政策はこの30年間、ゼロ近辺からゼロ、マイナスへと推移し、銀行システムを限界に追いやった。

特に中小銀行はビジネスモデルに対する外部脅威に直面している。高齢化と過疎化が進む地域を拠点にしており、大手銀行が得られる手数料関連収入を増やす能力がないのだ。日本には銀行が多すぎる。日本が経済刺激策へのアプローチを大きく変えなければ、銀行システムは絶え間ない圧力にさらされたままだ。

日本がマイナス金利政策を導入した直後の2016年3月以降、大手銀行の純利益は20%減少した。地銀の減少はさらに激しく、3年前の水準を約30%下回っている。

過去1年は、実質的に全ての地銀の株が下落した。その半分超は、下落率が30%を超えている。地銀株は数十年の間、日本株全体をアンダーパフォームしている。

日銀が公定歩合を0.5%に引き下げる直前の1995年初め、金利1%未満の商業銀行融資は存在しないも同然だった。融資残高の90%超は金利が3%以上だった。現在、日本の融資の90%は金利が2%未満だ。最も急速に伸びているのは金利がわずか0.25~0.5%の融資で、この1年に約10%増加した。

しかし、預金者に提供される金利はさらに急速にゼロに近づいた。結果的に銀行はしばらく収益を維持できたが、新規融資と新規預金の金利差は、1990年代に主流だった1.5ポイントからわずか0.5ポイントに縮小している。いくらデフォルト率が低いとはいえ、これでは経営が成り立たない。

大手銀の一部は対策を見いだしたが、それには深刻なリスクがあるようだ。専門知識と能力のある銀行は海外に進出して資産を買収し、日本ほど金利が低くない通貨での融資を手掛けている。

農林中央金庫は米欧のローン担保証券(CLO)市場の巨人だ。一方、三菱UFJフィナンシャル・グループは2019年3月末時点の外貨建て資産が111兆1580億円だったと発表した。同資産の増加ペースは過去10年で100%超と、国内資産の3倍だった。

中小銀行の海外進出はもっと難しく、可能な場合であっても賢明とは言えない。国際決済銀行(BIS)の調査によると、国内事業や国内での資金調達が弱い銀行は、外国で操業した際に衝撃への耐性が低いからだ。

日本の銀行の不安定な立場は、マイナス金利の失敗ではなく、それが完ぺきに機能していることを示す。中銀当局者は金融政策の転換について、市中銀行が利下げを反映しないなどとこぼすことが多いが、日本の銀行は反映してきたからだ。

現在の危険な行き詰まりを打破するには再編が必要だ。日本では多すぎる銀行と規則が合併を阻んできた。野村総合研究所によると、過去20年に合併で誕生した地銀11行のうち10行は営業費用を削減し、9行は規模縮小で効率を高めた。

日本の金融政策を批判する際に、利上げも追い風になると想像するのは間違いだろう。利下げと同様、利上げの影響が行き渡るには数年かかるとみられ、その間にデフォルトが増え、経済成長が停滞すると予想されるからだ。現行路線では、日本の銀行の将来は真っ暗に思える。収益力の低下でスルガ銀行のような不正が増えるだろう。同行はかつて地銀の星とうたわれたが、不動産融資に関連した書類偽造で評判を落とした。景気が悪化し、不良債権が増加すれば、最も弱い銀行で資金が逼迫(ひっぱく)するとみられる。近年に不動産市場での融資を拡大してきた銀行は特にそうだ。90年代、銀行システムの破綻で日本は失われた10年に突入した。現在、それが繰り返されるリスクがある。


以上、Wall Street Journalより要約引用しました。https://www.wsj.com/articles/japanese-banks-are-circling-the-drain-11565089206?mod=searchresults&page=1&pos=6

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