日本勢依存の 米CLO市場
1つの買い手集団に頼りすぎることには常に危険が伴う。その集団が消えればビジネスは終わりだ。
プライベートエクイティ(PE)の案件の裏付けに使われる高リスク融資の世界はこれを繰り返している。融資需要はローン担保証券(CLO)として知られる投資ビークルに支配されており、そのビークルは日本の銀行という1つの投資家集団に多くを頼っている。
日本の買い手はまだまだ健在である。他のCLO投資家はPEを後ろ盾にした企業の資金調達では日本の銀行の需要が欠かせないと考えている。実際に日本勢が買いを控えれば、利用可能な融資が減るうえにコストが跳ね上がり、厄介な事態となるだろう。
CLOでは買い入れた融資ポートフォリオを証券化してエクイティとデットとして販売し、資金を調達している。現在、米国で組成される新規レバレッジドローンの60%超はCLOに組み込まれている。この割合は2008年の金融危機前より多い。
さまざまな市場関係者によると、CLO市場のブームにつれ、日本勢は最上級の「AAA」格付けを持つシニア債の60~75%を買うようになった。農林中央金庫(農林中金)だけでもこのデットを620億ドル(約6兆8500億円)保有している。CLO市場全体の10%近くに当たる金額だ。
日本の銀行は他の安全な債券で得られるよりも高い利回りを求めてCLOに殺到した。CLOやそれが保有する融資は変動金利のため、金利上昇に対する備えにもなる。前回の金融危機の際にはCLOのAAA格付け債の底堅さも示した。サブプライム住宅ローンに影響を受けた他のビークルが崩壊した一方で、CLOのシニア債のデフォルト(債務不履行)はなかった。
しかし今回は、CLO人気もあってレバレッジドローンの平均リスクが上昇している。融資の利回りが圧迫されるなか、投資家に支払う資金を確保するため、CLOのマネジャーらはよりリスクの高い融資の購入に追い込まれた。これが格付けの低い融資の需要を押し上げてきた。バークレイズによると、米国では「B」ないし「Bマイナス」の融資の割合が2011年の20%未満から40%近くまで拡大している。フィッチ・レーティングスによれば、CLOの保有資産は「B」近辺に集中しており、「CCC」の融資も以前より増えている。
CLOに組み込む最低格付け融資の量には上限があるため、融資の格下げが相次げば資産売却を迫られかねないと懸念されている。しかし、それよりもCLOのマネジャーが単純に投資をやめ、融資からの返済・利息収入を投資家への返済に回す公算の方が大きい。
この格付けの問題と日本勢への依存は融資市場における双子の脅威となっている。懸念されているのは、日本の銀行からの新規資金が突如として途絶える事態だ。これは問題だ。PEを後ろ盾とする企業は、債務を返済せず継続的な借り換えに頼る傾向がある。蛇口が閉められれば、続いてデフォルトが増えるだろう。
以上、Wall Street Journalより要約・引用しました。
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