「不妊治療手当」 米企業の新たな採用戦略
米国の雇用者数は順調に伸びている。同時に、米企業の人事部は厳しい採用競争に直面し、優秀な人材を採用・維持するため手を尽くしている。その一つが不妊治療手当の拡充だ。
狙いは優秀な才能を奪い合う企業群の中で目立つことだ。高額な体外受精や他の不妊治療を受ける従業員への費用補助だけでなく、既存の保険を以前より手厚く、使いやすくすることも効果的だったと話す雇用主は多い。
位置情報サービス会社フォースクエアの人事担当者メガン・ラピデス氏は「増員計画を達成しようとするなら、激しい競争を勝ち抜かなくてはならない」と述べた。同社は最近、不妊保険を卵子凍結などの不妊関連治療全般に拡大したほか、同性のカップルや未婚者も利用できることを保証した。
コンサルティング会社ウイリス・タワーズワトソンが今年1月に行った調査によると、米国で2019年までに不妊治療手当の提供を予定している企業は約66%に上り、昨年の55%から増加している。調査は約400社(従業員総数700万人)を対象に行われた。来年には同性カップル向けの不妊治療手当を実施すると答えた割合は、既に男女カップルに不妊治療の金銭支援を行っている企業の81%となり、昨年の65%を上回った。適用対象を拡大している企業は、最大の狙いとして従業員の多様化と人材の確保・定着を挙げた。
画像共有サイトのPinterestは、16年には最大5000ドルだった体外受精への保障を17年に2万ドルに引き上げた。2018年1月からは一生涯で4サイクルを上限に体外受精の費用を提供している。これはカップルあたり5万~7万5000ドル相当の金銭支援である。アメリカン・エキスプレス は昨年、不妊治療に対する保障を一生涯で最大2万ドルから3万5000ドルに引き上げた。企業向けソフトウエア大手の独SAPは、保障を最大1万5000ドルから体外受精2サイクルに引き上げた。不妊治療薬の費用に対する最大1万5000ドルの支給も続けている。
昨年9月以前は、フォースクエアは不妊治療に1万ドルを提供していた。その後、利用に当たって従業員が不妊であることを証明しなくてもいいように制度を変更したため、より多くの労働者が利用できるようになっている。例えば、レズビアンのカップルが給付を受けることや独身女性が制度を利用して卵子を凍結することも可能だ。
不妊症の専門医やクリニックの評価・検索サイト、ファーティリティIQが11月に行った調査によると、そうした措置を受けて雇用主に対する労働者の意識が変化している。会社から費用補助を受けた体外受精患者の60%超は、その手当を理由に雇用されている企業で長期間働く可能性が高まったと述べ、53%はその結果として以前より自社の欠点に目をつぶるようになったと答えている。
こういった手法が優秀な労働者の確保につながるということは、それだけ働きながら不妊治療を行っている労働世代が多いということだ。日本ではどうであろうか?
以上、Wall Street Journalより要約・引用しました。
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