ビジネスクラスの高級化進める航空各社
航空各社は優良顧客を取り込もうとさまざまな機能を搭載した高級座席の導入を進めている。しかし装備コストは百万ドル単位で増える可能性がある。
新しいビジネスクラス用の座席はフルフラットのベッドにすることができる。15インチのディスプレーや何百チャンネルもの視聴が可能なエンターテインメントシステムも搭載され、他の乗客から見えないようにするプライバシーパネルも設置されている。いくつかの座席をまとめて壁に囲まれた「ミニスイートルーム」をつくれるものもある。
業界関係者によると、こうした高級座席を導入すれば航空会社には5万〜50万ドル(550万〜5500万円)の費用がかかる。デルタ航空やカタール航空、ユナイテッド・コンチネンタル・ホールディングスは、座席スペースがさらに狭くなったエコノミークラスからさらに収益を上げる方法を探りながらも、競うようにして最新の座席を導入している。
ビジネスクラスの乗客は依然として航空会社にとって最大の収益源だ。この顧客層の快適さを重視した戦略は大きな賭けともいえる。
フルフラットのベッドになる座席が1990年代初めに導入されてから、座席はますます複雑な製品となり、価格は上昇した。ビジネスクラスの座席1つを作るのに、複数のモーターや何十メートルもの配線など5000もの部品が使われることもある。開発や安全性試験もコストを押し上げている。また、航空会社が独自性を求めるため、最高級の座席になると生産台数が十数台にも満たないこともある。数百台になることはめったにない。こういった要因もコストを押し上げている。
航空電子機器メーカーのロックウェル・コリンズは、座席が航空会社の競争に欠かせないものとなったと指摘する。同社はBEエアロスペース買収で航空機用の座席で最大手となった。
カタール航空はロックウェルと3年をかけて新座席「Qスイート」を開発した。家族や同僚と利用できるように向かい合った4つの座席で1つのスペースをつくることができるようになっていて、2つのダブルベッドにもなる。両社とも座席の価格は明かさなかったが、カタール航空によると、Qスイートのスペースは普通の座席4席分と変わらないという。
ノールカロライナ州ウィンストン・セーラムにあるロックウェルの工場を訪ねると、アメリカン航空グループとサウジアラビア航空のビジネスクラス用の座席が並んでいた。両社の座席は同じフレームから作られているが、装飾や付属品が異なる。例えばサウジアラビア航空の座席には読書灯が付いている。ロックウェルによると、他の航空会社の幹部が来たときは、独自設計の詳細を見られないように一部の座席に覆いをかけるという。
読書灯一つ付けるにも追加の試験や認証が必要だ。ロックウェルでは胴体着陸を想定して重力の16倍の力を再現する装置を使った本格的な衝突テストを行っている。座席から外れて乗客や乗員を傷つける可能性のある部品は設計しなおさなければならない。
航空会社の中には特典として最優良顧客に座席を試してもらうところもある。座席の購入前に調整したほうがいいか意見を聞くためだ。
ロックウェルは30ポンド(約14キロ)の重りをトレーテーブルの上に何千回も置くなど、ロボットによるさまざまな耐久性試験を行っているが、人間が試験することで貴重な発見があることに気付いた。同社の内装事業で技術部門のディレクターを務めるグレン・ジョンソン氏によると、人間は設計者が予想もしなかった方法で物を壊すことがあるという。
普段出張で何気なく座り、仕事をしたり仮眠をとったりするビジネスクラスの座席は、他社との競争、試行錯誤と試験を経て据え付けられたものであるらしい。
以上、Wall Street Journalより要約・引用しました。
https://www.wsj.com/articles/airlines-dial-up-pampering-for-business-class-1502703001
Airlines are making bigger bets with premium passengers, offering luxury seats that are loaded with doodads that could push up the cost of outfitting a plane by ...
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