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グーグルが示した「職場で言ってはダメなこと」

 

8月上旬にグーグルで起こったある社員の解雇理由は、「社員の言論の自由」と「社員同士の尊重」という精神の両立を基本とするIT業界だけでなく、広く世間に議論を湧き起こしている。

そもそもフェイスブック 、ツイッター、グーグルの親会社アルファベットなどのIT企業は、社員が自由に意見を述べられるよう、社内オンライン掲示板、集会、そしてフォーラムなどを開催して各自に発言を促している。

 しかしその際に社員がほとんどの人が支持していない考えや他人が不快に感じる考えを示した場合、どう対応するべきか――。

グーグルが今直面しているのが、この問題だ。同社では社員の一人が「男性に比べて女性の方が生物学的に「不安に」なりやすい」などとし、性差別ではなくそうした違いがグーグル内でジェンダーギャップが生じている理由だと内部メモで述べた。この発言はグーグルだけでなく、IT業界で広く物議を醸している。

企業は社員などに対する嫌がらせや差別発言を禁止することができ、企業の価値や使命に反する言動を示した社員を解雇できると複数の弁護士は指摘する。弁護士事務所シップマン&グッドウィンで雇用法を専門とするダニエル・A・シュウォーツ氏は、「会社から何の措置も受けないまま、好き勝手に発言できる権利は社員にはない」と話す。「グーグルのような企業にとっての難題は、自由な発言を促すためのプラットホームを作っておきながら、考えを述べた社員を処罰していいのかどうかということだ」

メモを書いたグーグルの社員は、同社が従業員の多様性を高めるために導入した取り組みが一部の従業員にとって差別的だと批判。同社の幹部や多くの従業員がリベラルな考えに傾いているため、社内でこの問題について議論することが難しいとも指摘した。

グーグルのスンダー・ピチャイ最高経営責任者(CEO)は8月7日、社員に宛てたメッセージの中で社内の均衡を保とうと試みた。同氏は「われわれは、グーグルの従業員が意見を表明する権利を強力に支持する。そしてあのメモに書かれていたことの多くは、グーグルの従業員の大半が反対であるとしても議論の対象とするのに問題のない内容だった。しかし、メモの中には当社の行動規約に違反し、社内に性別についての紋切り型の考え方を広めようとする内容が含まれ、行き過ぎがあった」とメールで述べた。グーグルはメモを書いた従業員の氏名を公表していない。

メモを書いて解雇されたと名乗り出たソフトウエア技術者のジェームズ・ダモア氏は、グーグル幹部が口封じをしようとしたとして政府の労働局に苦情を申し立てたとメールで明かしている。

弁護士のシュウォーツ氏によれば、雇用主側は職場での嫌がらせに関する法律により、オフィスのデスクに飾られた写真などをチェックできるのと同じようにオンライン掲示板での発言を監視する権利がある。

カリフォルニア大学バークリー校で法律を教えるビクトリア・プラウト教授は、企業側も社内のオンライン掲示板などを改善し、より困難な話題も議論できるよう環境を整えるべきだと話す。同氏はフォーカスグループや調査などで社員の意見を吸い上げることもひとつの方法だと述べる。

 

ダモア氏を解雇したことで、グーグルには複雑な事態が生じる可能性もある。人材スカウト会社のフレデリクソン・プリブラ・リのバレリー・フレデリクソンCEOは、今回の理由で従業員を解雇したことにより、実際はメモに同調しているその他の従業員が孤立しかねないと指摘する。

「確かに1万人ほどは彼が解雇されるべきだと考えているかもしれないが、もしかしたら30人から40人程度は自由に考えを述べることが許されるべきだと思っているかもしれない」と同氏は話す。

一方で最近グーグルを退社した技術者のヨナタン・ザンガー氏は、メモが職場環境に好ましくない影響を与えたため、メモの作者が自分のチームに所属していたら解雇を求めただろうと語る。

ザンガー氏はこう述べている。「お互いを尊重し合う形で自由に議論できる環境を社内に作るのはとても重要だ。しかし『あなたのような人は、私のような人よりも本質的にこの仕事に向いていない』という発想自体が無礼なので、相手を尊重しながらこのような発言はできないはずだ」

以上、Wall Street Journalより要約・引用しました。

https://www.wsj.com/articles/memo-sparks-firestorm-at-google-1502246996

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