幹部クラスのジョブホッパーに対するイメージの変化
米国で人事担当幹部として働くコリー・ヘラー氏(51)は1996年以降、勤務先を9回変えた。しかもそのうち6社では、在職期間が3年に満たない。
少し前までは、ヘラー氏のようなレジュメを持つ人材は、たとえ幹部職にいたといえども「落ち着かないジョブホッパー」と見られていたであろう。だが、幹部ヘッドハンターら専門家によると、現在ではそういった悪いイメージが薄れ始めている。その背景には企業に対して、迅速に結果を出すためのプレッシャーが大きくなっていることや、従業員の職場への忠誠心が薄れていることがある。また、多数の企業で働いた経歴を持つ幹部を外部から招くことで、新鮮な見方や様々な経験を持ち込んでくれるという期待を採用側企業が持つようになっていることを示唆する。
米国で転職サービスを手掛けるエグゼクネットによると、企業の管理職が1社に在籍する平均期間は2005年は3.4年だったが、2015年には4.1年に伸びた。興味深いのは、管理職として一つの企業でしっかりと長年勤務する人材も引き続き多く存在すると同時に、様々な企業を短期間でてこ入れし、次に転職する人材も増えているということだ。ニューヨークを拠点に管理職向けのコーチングを行うローズ・フィオリリ氏は、管理職が同じ勤務先に留まるのはリスクが高くなっていると警告する。「新たな職場で活躍できなくなる懸念」が生じるからだ。
かつては上級管理職達の憧れの勤務先で、人生の最終ポジション提供社と思われていたような大企業、IBMやGEでも、最近の幹部在職期間は短くなっている。例えば新興企業のヌードル・アナリティクスを今年立ち上げた4人の内2人は、IBMとGEの幹部であった。しかも両者のIBMとGEにおける在職期間はいずれも21カ月に満たなかった。
少なくともアメリカでは、転職を頻繁に繰り返す幹部人材は、新たな職探しの時に過去の転職回数によってペナルティーを受けることはなくなってきているようだ。
ヘラー氏は2015年、米国病院運営大手インターマウンテン・へルスケアの人事担当部門でトップの座に就いた。同氏はインターマウンテン・ヘルスケアに転職する前は、フロリダ州の医療保険会社に1年務めていた。インターマウンテンはユタ州最大の雇用主で、22の病院と180のクリニックを有する。インターマウンテンへの転職は、キャリアダウンではなく、キャリアアップだ。
企業の経営幹部は時に、1年かそこらで転職するミレニアル世代に苦言を呈する。米労働統計局の報告によると、2014年の25-34歳の元勤務先での勤続年数の中央値は3年であった。ちなみに25歳以上の全労働者の2014年の同中央値は5.5年であった。
皮肉なことにヘラー氏は、現在インターマウンテンの人事幹部として、優秀な従業員の離職率を下げるための政策を考えている。同社の従業員の多くは、ミレニアル世代、35歳未満だ。同紙は、仕事の満足度への期待が大きいミレニアル世代は「成長の機会を与えない限り」辞めてしまうケースが多いと語る。同紙は最近、試験的なプロジェクトを始動させた。それは若い従業員に対し、来年1月以降、18か月から24カ月ごとに移動ないし昇進の機会を与えるというものだ。さて、うまく機能するかどうか。
以上、Wall Street Journalより要約・引用しました。
http://www.wsj.com/articles/job-hopping-executives-no-longer-pay-penalty-1469545287
www.wsj.com
The stigma of job hopping, moving from job to job every few years, is starting to fade as companies seek high-level hires with multiple recent employers.
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