米国最高裁判決後 - 雇用主が職場で気を付けるべきこと
米国最高裁判決後 - 雇用主が職場で気を付けるべきこと
6月26日、米国最高裁は同性婚は憲法で保障された権利であるとの判決を出し、世界を高揚させました。この判決は、同性愛者、同性婚の従業員を職場に持つ雇用主に必然的に意識の変化を喚起するものです。日本社会の同性愛者に対する意識は米国より少なくとも20年遅れています。
しかし、性的少数者の基本的人権を保障するべきであるという動きは、例え日本でも後退するものではないでしょう。米国雇用主が同性愛者、同性婚をどう扱うかは、今まで州法や個々の会社の裁量に任されているところがありましたが、先週の最高裁判決がアメリカ社会に与える実際的影響を知っておくのは大切なことです。
1.雇用主が配偶者向け福利厚生を提供している場合、普通婚、同性婚に関わらず同内容の福利厚生を全従業員及び配偶者に提供するべきなのか?
答えはYes。最高裁判決後、普通婚、同性婚という区別はなくなり、基本的に全ての婚姻は同じ扱いを受けることになります。
2.雇用主が宗教上同性婚に反対の立場をとる場合はどうなるのか?
雇用主の選択肢は限られています。雇用主が同性婚の配偶者に福利厚生を与えたくなければ、普通婚の配偶者にも福利厚生を与えないという選択をすることしかできません。仮に普通婚の配偶者のみに福利厚生を与えた場合、同性婚の従業員から差別的扱いの名目で訴訟される可能性があります。
3.最高裁判決により、煩雑さを敬遠する理由から配偶者福利厚生を提供する企業の数が減るのではないか?
答えはYes。そもそも米国では最高裁判決の以前から、経費節約のため配偶者福利厚生をやめる企業が増えていました。人事コンサルティング会社Mercerの調べによると、大企業1100社の内、配偶者福利厚生を提供していない企業は2014年は17%であり、2012の12%から増加の傾向を見せていました。最高裁判決は、この傾向を後押しする可能性があります。
4.同性婚従業員の税金への影響は?
普通婚、同性婚カップルの課税は全く同じ取扱いとなります。今まで米国内での統一のガイドラインはなく、同性婚従業員は配偶者控除を認められず所得税を多く払ったりするケースもありましたが、今後は普通婚カップルと同様の配偶者控除を受けられるようになります。
5.同棲カップルへの福利厚生を与えていた企業の対応は変化するか?
米国では、結婚をしていない同棲カップルへの福利厚生を行っている企業も多くあります。これは特に、法律上結婚することができないゲイカップルを対象に行われていたケースが多いのです(さすがリベラルなアメリカです)。しかし、先週の最高裁判決で、州に関わらずゲイが結婚する権利が保障されたことで、同棲カップルを対象とした福利厚生を提供する企業は減っていくと考えられます。
以上、配偶者福利厚生がどうなるかというところが大きな焦点であるようですが、日本ではそもそも普通婚の配偶者ありきで福利厚生制度、税制が確立されています。ですからもし日本で同性婚が認められるとなると、企業側は米国よりより真正面から変化に対応しなければならなくなることでしょう。
上記はWSJより要約引用しました。
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